事業を始めたばかりの方や、これから新しい設備投資を考えている経営者の方にとって、「どこに融資の相談をすればいいのか」は悩みどころではないでしょうか。銀行、公庫、行政書士、そして税理士――選択肢が多く、誰に頼むのが正解なのか迷う方は少なくありません。
特に、初めて融資を受ける方にとっては、どんな書類が必要なのか、どんな質問をされるのか、どれくらい時間がかかるのかといった不安もつきものです。さらに、金融機関ごとに審査の基準や見られるポイントも異なるため、自己判断で動いてしまうと、思わぬ落とし穴にはまることもあります。
そんな中で注目されているのが、「税理士に融資相談をする」という方法です。税理士は数字の専門家であり、事業の収益性や資金繰りを正確に分析できる立場にあります。融資を通すために欠かせない事業計画書の作成や金融機関とのやり取りにおいても、心強いサポーターとなります。
この記事では、融資相談を税理士に行うメリットや、銀行・日本政策金融公庫との違い、そして失敗しない相談のポイントをわかりやすく解説します。融資を受ける準備を進めている方や、どこに相談すべきか迷っている方にとって、判断の助けになる内容です。
融資相談の前に知っておきたい「融資の基本」
融資とは?自己資金との違いと基本構造
まず理解しておきたいのは、「融資」と「自己資金」はまったく性質が違うということです。
融資とは、金融機関などからお金を借りて、一定期間内に返済することを前提とした資金調達方法です。これに対し、自己資金は自分で貯めたお金や投資家からの出資など、返済の必要がないお金を指します。
融資を受ける場合、金融機関は「返せるかどうか」を最も重視します。そのため、売上の見込みや利益率、事業の安定性など、数字で説明できる根拠が求められます。ここで事業計画書や過去の決算書が重要な役割を果たします。
また、融資にはいくつかの種類があります。たとえば、創業時に利用できる「創業融資」、運転資金として使う「短期融資」、設備購入のための「設備資金」などです。資金の目的に応じて、申請する制度や提出書類が変わるため、最初に目的を明確にしておくことが大切です。
どんな時に融資相談すべきか
「資金が足りなくなってから相談する」という方も少なくありませんが、それでは手遅れになるケースもあります。金融機関の審査や手続きには時間がかかるため、「資金が必要になる前」に相談を始めるのが理想です。
たとえば、次のようなタイミングで融資相談を検討する方が多くいます。
- 新しく事業を始める(創業資金を確保したい)
- 人員を増やしたい、または新店舗を出したい
- 売上は伸びているが、資金繰りが追いつかない
- 一時的に資金ショートの可能性がある
- 設備やシステムの更新をしたい
こうした場面で大切なのは、焦って動くのではなく、自社の資金状況を正しく把握した上で、最適な融資先や制度を選ぶことです。 そのためにも、数字を整理できる専門家のサポートがあると、より確実に融資を進めることができます。
融資相談先の比較|銀行・公庫・税理士の違い
銀行や信用金庫に直接相談する場合
融資と聞いてまず思い浮かぶのが「銀行」や「信用金庫」ではないでしょうか。
これらの金融機関は地域の中小企業を支える役割を担っていますが、審査は比較的厳しい傾向があります。 担保や保証人を求められるケースも多く、初めて融資を受ける方にとってはハードルが高く感じられるかもしれません。
また、銀行は融資の可否を判断する際に、決算書の内容や過去の取引履歴を重視します。 そのため、黒字経営や安定したキャッシュフローがある企業ほど、融資が通りやすくなります。 一方で、創業間もない事業や赤字が続いている場合は、融資が難しくなることもあります。
ただし、地域密着型の信用金庫は、取引履歴や経営者との信頼関係を重視する傾向があり、柔軟な対応をしてくれることもあります。 日頃から取引を続け、こまめに相談しておくことが、融資成功につながる大切なポイントです。
日本政策金融公庫に相談する場合
国が運営する金融機関である日本政策金融公庫(にっぽんせいさくきんゆうこうこ)は、創業期や中小企業を支援するための制度が充実しています。 特に、「新規開業・スタートアップ支援資金」などは、無担保・無保証で利用できる場合もあり、初めての融資先として選ばれることが多いです。
公庫での融資は、面談と事業計画書が重視される点が特徴です。 審査担当者は、経営者の熱意や事業の実現性をしっかり確認するため、書類の内容だけでなく、面談での受け答えも重要になります。 数字だけでなく、「なぜこの事業をやるのか」「どんな市場で成功できるのか」を説明できる準備が欠かせません。
また、公庫の融資は民間金融機関との併用も可能であり、創業時から長く付き合える資金調達のパートナーとなるケースもあります。 審査に時間がかかることもあるため、早めの準備がポイントです。
税理士に融資相談する場合の特徴
税理士に融資相談をする最大の強みは、数字に基づいた信頼性の高いサポートを受けられることです。 税理士は普段から決算書や資金繰りを管理しているため、金融機関に対して「この会社は返済できる」と説明できる資料を作成するのが得意です。
また、税理士は金融機関とのつながりがある場合が多く、担当者との調整や申請の進め方を熟知しています。 必要な書類の整え方や、事業計画書の改善点などを具体的にアドバイスしてもらえるため、融資の通過率を高めやすいのも特徴です。
さらに、税理士は単なる融資サポートにとどまらず、その後の返済計画や経営改善の提案まで行うことができます。 単発の相談だけでなく、事業を継続的に支援してくれるパートナーとしても心強い存在です。
税理士に融資相談するメリットとデメリット
税理士に相談するメリット
税理士に融資の相談をする最大のメリットは、数字のプロとして金融機関に信頼されていることです。 税理士は日々、企業の決算書や資金繰りを扱っているため、銀行や日本政策金融公庫が重視する「返済能力」を正確に説明できます。 そのため、税理士が関わることで融資の通過率が高まるケースも少なくありません。
また、税理士は単に融資の書類を作るだけでなく、「どうすれば融資が通るか」までを見据えたサポートを行います。 たとえば、利益の見せ方、事業計画書の数字の根拠、過去の経営データの整理など、細かな部分まで一緒に確認してくれるため、金融機関に好印象を与えやすくなります。
さらに、税理士に相談することで、融資だけでなく今後の経営全体を見直すきっかけにもなります。 融資が通ったとしても、その後の返済や資金管理がうまくいかないと意味がありません。 税理士は「借りて終わり」ではなく、返済計画や資金繰り改善までトータルで支援できる点が大きな魅力です。
加えて、税理士が関与している場合、金融機関からの信頼が得やすいという利点もあります。 「数字を専門家が確認している会社」という印象を与えることで、融資審査がスムーズに進むことがあります。
税理士に相談するデメリット・注意点
一方で、税理士に相談する際にはいくつか注意点もあります。 まず、すべての税理士が融資サポートを得意としているわけではないという点です。 税務や会計が中心の業務で、融資や資金調達にあまり関わっていない事務所もあります。 そのため、実績や支援内容を事前に確認しておくことが大切です。
また、融資支援を行う場合、相談料や成功報酬が発生するケースもあります。 ただし、事前に見積もりや契約内容をしっかり確認しておけば、トラブルを避けることができます。
さらに、税理士が融資サポートをする場合でも、最終的な審査を行うのは金融機関です。 どんなに優れたサポートを受けても、経営状況や事業内容によっては希望通りの融資が通らない場合もあります。 そのため、過度な期待を持ちすぎず、冷静に準備を進める姿勢が大切です。
このように、税理士への融資相談には多くのメリットがある一方で、依頼する際の見極めや事前準備も重要です。 自社の状況をしっかり共有し、信頼できる税理士を選ぶことが、融資成功の第一歩となります。
融資相談に強い税理士を選ぶポイント
実績・金融機関ネットワークの有無を確認
融資相談を税理士に依頼する際は、まず実績があるかどうかを確認しましょう。 過去にどのくらいの融資サポートを行ってきたのか、どんな業種の支援が得意なのかを把握することで、安心して任せることができます。
また、税理士が金融機関とのつながりを持っているかも重要です。 日本政策金融公庫や信用保証協会、地元の金融機関との連携実績がある税理士は、融資の流れや審査の傾向をよく理解しています。 そのため、金融機関が求める情報を的確にまとめ、スムーズな申請につなげてくれる可能性が高くなります。
事業計画書のサポート力
融資審査において最も重視される書類の一つが事業計画書です。 この書類には、今後の売上予測や利益計画、資金繰りの見通しなど、数字の根拠を示す内容が求められます。 しかし、経営者だけで作成するのは難しく、数字に裏付けを持たせるには専門的な知識が必要です。
融資に強い税理士は、事業計画書の作成を一緒に行い、「金融機関が納得する数字の作り方」をアドバイスしてくれます。 単に見栄えの良い資料を作るのではなく、実現可能で説得力のある計画を立てることができる点が大きな強みです。
創業支援や経営改善にも対応できるか
融資は一度きりの支援ではありません。 創業期には「創業融資」、成長期には「設備投資や人員拡大のための融資」、そして資金繰りが厳しいときには「リスケジュール(返済計画の見直し)」など、事業の段階ごとに必要なサポートが変わります。
そのため、創業支援から経営改善までトータルで対応できる税理士を選ぶことが重要です。 単発の融資支援だけでなく、経営相談や資金管理のサポートを継続して行ってくれる税理士であれば、長期的に安心して事業を任せられます。
また、補助金や助成金の申請にも詳しい税理士であれば、融資と併用して資金調達の幅を広げることも可能です。 このように、幅広い支援ができる税理士は、資金面だけでなく経営全体のパートナーとして大きな存在になります。
融資相談の流れと準備すべき書類
ステップ① 相談前の準備
融資相談をスムーズに進めるためには、事前準備がとても大切です。 まず、自社の資金状況を整理しましょう。どのくらいの金額を、どんな目的で借りたいのかを明確にしておくことが第一歩です。
具体的には、以下の点を整理しておくとスムーズです。
- 資金の使い道(例:設備購入、人件費、運転資金など)
- 必要な金額と、その根拠となる見積書など
- 返済の見通し(毎月どのくらい返せるか)
- 過去の決算書・確定申告書(過去3年分が目安)
これらの情報をあらかじめ整理しておくことで、税理士との面談時にスムーズに話を進めることができます。 また、創業前の方は、事業計画書のたたき台を用意しておくと良いでしょう。
ステップ② 税理士との打ち合わせ
準備が整ったら、税理士との打ち合わせを行います。 この段階では、融資の目的や現状の資金繰り、今後の経営計画などを詳しく共有します。
税理士は、これらの情報をもとに「どの融資制度が最適か」「どの金融機関が通りやすいか」を判断し、最適な提案をしてくれます。 同時に、融資に必要な書類のリストアップや作成サポートも行ってくれるため、初めての方でも安心して進めることができます。
また、税理士が作成をサポートしてくれる主な書類には、次のようなものがあります。
- 事業計画書(売上や利益の予測を含む)
- 資金繰り表(入出金の流れを明確にする)
- 決算書や確定申告書の分析資料
これらを丁寧に準備することで、金融機関に対して信頼性の高い申請を行うことができます。
ステップ③ 金融機関への申請・面談サポート
書類が整ったら、いよいよ金融機関へ申請を行います。 ここでも税理士のサポートが大きな助けになります。
税理士は、金融機関に提出する書類の最終チェックを行い、面談の際にどのように説明すればよいかもアドバイスしてくれます。 場合によっては、面談に同席してフォローしてくれる税理士もいます。
融資面談では、事業内容や資金の使い道、返済計画などを聞かれます。 ここで重要なのは、数字に根拠を持って答えられるかどうかです。 税理士と一緒に準備しておけば、質問に対して自信を持って答えられるようになります。
申請後は、審査結果が出るまでに1〜3週間程度かかるのが一般的です。 必要に応じて、追加資料の提出や修正対応を行う場合もありますが、税理士がサポートしてくれることで安心して対応できます。
よくある失敗例と対策
根拠のない数字で事業計画書を作成してしまう
融資申請の際に多い失敗が、現実とかけ離れた数字を記載してしまうことです。 「売上はこれくらい伸びるはず」「経費は少なく済むと思う」といった感覚的な予測では、金融機関の審査を通過することは難しくなります。
金融機関は、数字に対して「なぜその金額になるのか」という明確な根拠を求めます。 根拠があいまいだと、事業計画そのものの信頼性が低く見られてしまうため注意が必要です。 税理士が入ることで、売上予測やコスト計算の裏付けを数字で示すことができ、より説得力のある事業計画書に仕上げることが可能です。
複数の金融機関に同時申請して信用を落とす
「少しでも早く融資を受けたい」との思いから、複数の銀行や公庫に同時に申請するケースがあります。 しかし、これは逆効果になる場合があります。 金融機関は他社への申請状況を確認できるため、「この会社は資金繰りが厳しいのでは」と判断され、信用を下げてしまうリスクがあるのです。
そのため、融資申請は優先順位を決めて段階的に進めることが大切です。 税理士が入れば、どの金融機関から申請を始めるべきか、どのタイミングで次の申請をするかを戦略的に判断してくれます。 これにより、無駄な申請を減らし、より高い確率で融資を成功させることができます。
借りすぎ・返済計画の甘さ
融資は「借りられるだけ借りた方が安心」と考える方もいますが、それは危険です。 借りすぎると毎月の返済負担が重くなり、資金繰りを圧迫してしまう可能性があります。 逆に、必要な金額を正確に見積もっていなければ、途中で資金が足りなくなることもあります。
大切なのは、「借りること」よりも「返せる計画を立てること」です。 税理士と一緒にキャッシュフロー表を作成すれば、売上と支出のバランスを見ながら無理のない返済計画を立てることができます。 この計画がしっかりしていると、金融機関からの評価も高まり、信頼性のある申請が可能になります。
相談のタイミングが遅い
資金が足りなくなってから慌てて相談するのも、よくある失敗の一つです。 金融機関の審査には時間がかかるため、資金が必要になる2〜3か月前には相談を始めるのが理想です。 早めに税理士へ相談することで、必要書類の準備や事業計画の見直しなど、余裕を持って進めることができます。
融資は、準備と計画の質によって結果が大きく変わります。 焦らず、専門家のサポートを受けながら、「通る融資」につながる戦略的な申請を行うことが大切です。
FAQ|融資相談に関するよくある質問
相談だけでも対応してもらえますか?
はい、相談だけでも対応してくれる税理士事務所は多くあります。 「融資を受けるかまだ決めていない」「どの制度が自分に合うかわからない」という段階でも、気軽に相談して大丈夫です。 税理士は、現状の数字や資金繰りを見ながら、融資が必要かどうか、どんな方法が適しているかを一緒に考えてくれます。
初回の相談を無料で行っている事務所も多く、資金調達の方向性を見極める場として利用する方も少なくありません。 一人で悩まず、早めに専門家へ相談することで、無理のない計画を立てることができます。
創業前でも相談できますか?
もちろん可能です。 むしろ、創業前から相談することで融資の成功率が高まります。 日本政策金融公庫などの創業融資は、事業がまだ始まっていない段階でも利用できる制度が多く、事前準備が鍵となります。
税理士は、創業時に必要な資金計画や収支シミュレーションを一緒に作成してくれるため、金融機関が納得しやすい事業計画書を作ることができます。 「どのくらい自己資金が必要か」「どの制度を使えばよいか」といった疑問にも丁寧にお答えさせて頂きます。
顧問契約をしていなくても融資支援を受けられますか?
はい、スポットで融資支援を受けられる税理士も多く存在します。 融資サポートだけを単発で依頼できるケースがあり、顧問契約を結ばなくても相談が可能です。
また、成果報酬型の事務所もあり、融資が実際に通った場合のみ費用が発生する仕組みを採用していることもあります。 このような形であれば、初めての方でも安心して相談して頂けます。
どんな書類を準備すればいいですか?
基本的には、以下のような書類を求められるケースが多いです。
- 決算書または確定申告書(過去3年分程度)
- 事業計画書(売上・利益の見込みなど)
- 資金繰り表(今後の入出金予定)
- 見積書・契約書など資金使途を説明できる資料
創業前の場合は、これに加えて自己資金の確認資料(通帳コピーなど)や、事業の見通しを説明できる書類が必要になります。 税理士に相談すれば、必要な書類をひとつひとつ確認しながら準備できるため、抜け漏れの心配がありません。
融資が通らなかった場合はどうなりますか?
融資が通らなかった場合でも、原因を分析し、次に向けた改善策を提案いたします。 例えば、資金繰りの見直し、別の融資制度への再チャレンジなど、再申請のサポートを受けることも可能です。
一度審査に落ちたからといって、すぐに諦める必要はありません。 税理士と一緒に準備を整えれば、次の申請で通る可能性を高めることができます。
まとめ|融資相談は「数字を理解する専門家=税理士」へ
融資を成功させるために最も大切なのは、しっかりとした準備と正確な数字の裏付けです。 金融機関は「返せる根拠があるか」を重視するため、感覚や勢いだけで申請をしても良い結果にはつながりません。 その点、税理士は経営数値をもとに、説得力のある事業計画書や資金計画を一緒に作成できる心強いパートナーです。
また、税理士は融資申請のサポートだけでなく、その後の返済計画や資金繰り改善、節税対策までトータルで支援してくれます。 融資を「一時的な資金調達」として終わらせず、事業を安定・成長させるためのステップとして活かすためには、専門家のサポートが欠かせません。
さらに、創業前や資金繰りに悩んでいる段階から相談することで、失敗を防ぎやすくなります。 「どこから手をつけていいかわからない」という状況でも、税理士が一緒に数字を整理し、融資の方向性を明確にしてくれます。
融資は、会社の未来を支える大切な一歩です。 焦らず、そして慎重に、信頼できる税理士と共に計画的に進めることが成功への近道です。
融資支援に強い当事務所へご相談ください
融資は「必要な時に、必要な金額を、無理なく借りる」ことが何よりも大切です。 しかし、そのためには金融機関に伝わる数字の準備と、信頼される資料作りが欠かせません。 自分だけで進めようとすると時間もかかり、思うような結果が得られないケースも少なくありません。
アテンド会計事務所では、日本政策金融公庫・保証協会付き融資などの申請サポート実績が豊富にあります。 事業の内容や経営状況を丁寧にヒアリングし、金融機関が納得する「通る事業計画書」の作成を一緒に行います。 また、面談対策や書類準備、融資後の返済計画まで、安心してお任せいただける体制を整えています。
「どの制度を使えば良いのか分からない」「初めての融資で不安」という方も、まずはお気軽にご相談ください。 あなたの状況に合わせて最適な融資方法をご提案いたします。